Ⅰ.故郷

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  「一ヶ月前に会ったばっかりでしょ? そんな急に変わらないよ」 「ううん。すっとした」 「それって痩せたってこと?」 「うーん。ちょっと違う」 「えぇー」  私が残念そうな声を上げるとお母さんは口元に手を当て、クスクスと笑いながら答えた。 「すっとしたっていうより、凛としたって感じかな?」  予想外の言葉を聞かされた私は、一瞬キョトンとした顔をする。  "凛とした"  そう言われたのは初めてで、私はなんだか照れくさい気持ちになって思わず頬を緩くした。   「ほら。早く行こう。みんな首を長くして待ってるわよ」  一人照れる私を余所に歩き出したお母さんの隣を、私も右手に持っていたキャリーバックを引きずりながら歩き始める。  市街地から少し離れているこの田舎町は不便なだけあって、他の街のように時代に流されて急速な発展することもなく、この町なりにゆっくりと時間が進んでいる。  所々新しい家が増えていたりするけど、町全体の雰囲気は私が暮らしていた頃とあまり変わらない。  そんな穏やかな町の空気を堪能しつつ、お母さんと談笑しながらしばらく歩くと、懐かしい我が家が見えてきた。  
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