1642人が本棚に入れています
本棚に追加
じりじりと追いつめられてるような、何とも言えない気持ちになる私。
そんな私の感情を読み取ったように、隣からお母さんが口を挟んだ。
「何言ってんのよ。桜が戻ってくるって聞いたら、その日一日中上機嫌だったじゃない」
「夏子先生!」
意地悪な笑みを浮かべるお母さんに向けて、ゆっこは膨らみのある唇を可愛く尖らせた。
すると、玄関からまた新たに何人かの人影が現れる。
「やっと帰ってきたー!」
それはどれも懐かしい顔ばかりで、私は自分の芯がツンとするのがわかった。
我が家に帰ってきた事を実感した。
「ただいま」
私がそう言うと、みんなは笑いながら答えてくれる。
「おかえり」
その"おかえり"があまりにも優しくて温かくて……私は、今目の前にいる、誰も血の繋がらないその家族がとても愛おしく思えた。
最初のコメントを投稿しよう!