53人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、古宮も来たことだし改めて紹介するぞ」
そう言うと、黒板に少女の名前を書き出す先生。
【町…田…葵】
その名前を見て、俺は驚きとともに心臓がドキドキしていた。
「町田葵さんだ。じゃあ、町田さんから皆にあいさつでも」
「よろしく…」
めんどくさそうに言うその感じは、俺の知ってる葵とはかけ離れていた。
だから、ほんとにあの葵なのかどこか信じられずにいた。
でも、見た目は確かにあの頃の面影がある。
「じゃあ、席は古宮の隣だ」
そういえば気になっていた。
何日か前から俺の隣に新たに机が置かれていたことに…。
葵が近づいてくる。
俺は心臓がはちきれるかと思う程、ドキドキしていた。
一瞬目があったが、すぐにそらされてしまった。
やはり、雰囲気もそうだけどどこか俺の知ってる葵と違う。
俺はおそるおそる声をかけた。
「よ、よろしく…」
しかし返事はなく、しかも少し睨まれたような気がした。
休み時間になると葵の周りにはクラスメート達が群がった。
案の定、質問責めにされている。
葵は誰の質問にも答えず、立ち上がると、ごめん、ちょっと…と言い、教室から出ていってしまった。
クラスメート達はなんか感じ悪くない?
可愛いからって調子のってんじゃん?
など好き勝手言っている。
俺は確かめずにはいられず、すぐさま葵のあとを追いかけた。
「葵!」
葵はピタっと立ち止った。
「あ…あの、葵?」
俺は間違ってる覚悟で葵の名前を呼んでみた。
「やっぱしあんただったんだね。なんでこの学校にいんの?」
「え?」
「あたしに話しかけないで、うざいから」
それは昔の葵からは考えられないような言葉だった。
葵は一度も振り返ることなく歩きだし、立ち去っていった。
俺はただ、その場にボー然と立ち尽くすしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!