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最後に会った5年前の夏祭り…今のあいつと昔のあいつがどうしても結び付かない。
あいつはこの5年をどう過ごしてきたのだろうか。
そこまで葵を変えてしまうような出来事があったのだろうか。
俺はこの5年間の葵を知らない。
それから立ち去った葵は、保健室へと向かった。
保健室に入ると20代後半くらいの女の保健医がいた。
「あら?見ない顔ね」
「今日、転校してきたんで」
「あら、そうなの?クラスと名前は?」
「2年12組の町田ですけど…」
「町田さんかぁ、あたしは保健医の高橋、よろしくね、今日はどうしたの?」
「ちょっと気分悪くて…」
「そう、じゃあベッド使って休んでていいわよ」
葵は返事をせず、そのままカーテンをして、ベッドにもぐりこんだ。
(なんで今頃、あいつに…)
いろいろと考えごとをしていると、だんだんウトウトしてきて、そのまま眠りについてしまった。
【ゆっくりと階段を降りて行く、葵。
(あたしここ知ってる…)
階段を降りきると、すぐに居間のドアがあり、その取っ手へと手をのばす。
(やめて…開けちゃダメ…)
そのドアを開けると部屋の中は真っ暗だった。
(ダメ!それ以上見ちゃダメ!!)
真っ暗な部屋をゆっくりと見渡すと一人な女が立っていた。
(ダメ!…いや…)
その女を見ると手元あたりに光る物が見えた。
その先からは何かポタポタと垂れているのがわかる。
(いや…もう見たくない…誰か助けて)。】
目が覚めると汗がすごく、髪もブラウスも濡れてしまっていた。
カーテンを隔てても、オレンジ色のやさしい光が差し込んできて、葵はその光りにどこかほっとしいた。
ゆっくりと上半身を起こすと、汗を拭った。
(また…あの時の夢…もう、思い出したくないのに)
葵はゆっくり、ベッドから降りて、窓際に歩いた。
保健室の窓からは校庭が見えて、オレンジ色の光につつまれながら、部活をしている人達がいる。
その時、ガラッとドアが開き、保健の先生が入ってくる。
「あら、起きたの?よく寝てたわねぇ。もう放課後よ」
「もう帰ります」
「大丈夫?」
「はい」
そう言うと葵は保健室から出ていってしまった。
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