前編

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「隼人君のお弁当、すごいねー」 「そんなにすごくないって」 「十分すごいよ。ね、美沙(みさ)ちゃん」   聞いてきたのは、私の友人、麻奈(まな)だ。 彼女の言うように、隼人君の弁当はすごかった。 私たちのものとは比べ物にならないほど。 料理とか得意だとは聞いていたけど、これは想像以上だった。 「男の子でそんなに料理出来る人、初めて見たよ」 「珍しいよね」 「そうは言っても、風(ふう)の弁当だって立派じゃないか」 「風君は特別じゃない?」 「小さな頃からずっとやってたから慣れてるだけだよ」 いつも忘れがちだけど、風君は色々事情があって幼い頃から家事をやっていたらしい。 だからこそ、彼の弁当はいつも立派だった。 二人の弁当を比べてみる。 順番がつけにくい程、二人の弁当の立派さは同じだった。 「この卵焼き、もらってもいい?」 「いいよ。ちょっと作りすぎたし、好きなの食べてくれ」 「本当に?ありがとー♪」 隼人君の弁当の中にある卵焼きをもらって食べてみた。 うん、甘さ加減もちょうどいいし、何よりふわふわしている。 今まで食べた中でも、最高だ。 周りを見ると、みんなも味の余韻に浸っているようだった。
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