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「地図によると……多分この辺だな」
ミラージュの本部を出て数十分、頼斗は右左の区別がつかないような、深い森の中にいた。唯一の頼りはミラージュが木に着けている目印のリボンと、手元にある地図だけだ。
「ん~、何も変わってる気がしない……まぁ未開の森だから仕方ないか」
1人でぶつぶつそんなことをぼやきながら、頼斗はなんとか目的地付近に着いた。
「何もいねぇ……間違ったか?」
もちろんそんな質問に答える者など、ここにはいない。頼斗は虚しくなり、近くの木の根に腰をおろした。
「にしても本部の外観凄かったなぁ」
辺りへの警戒を怠らず、頼斗は出てくるときに見た、ミラージュ本部の外観を思い出していた。
ミラージュ本部の外観は、まるで城だ。そしてかなり大きい。いったい何万人収容する気なのかと、真面目に考えてしまうくらいの大きさだ。そして、その城は本部の一部。他にも地下通路を通じて、何ヵ所かの建物と繋がっているらしい。
「どうりで自分の部屋から訓練所までが、遠いはずだ。地下を通っていたとはな」
頼斗が不満そうな顔をして言う。そのとき、前の木々がガサッと、いかにも何かいますというような音をたてて揺れた。
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