流血

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水の流れる音が聞こえる 水道を全開に解放 カミソリが光を放つ 右手首には似たような傷 カミソリの跡 血管に達するほどの傷ではなく 軽く切る 血が水に溶けて消えていく 貧血から目眩がやってくる この時にだけ自分が生きていることが確認できる 流れる血が暖かい 呼吸から取り込まれた酸素によって ドス黒くなった血が腕を伝う 私はこの血を舐めるのが好きだった 血の中に含まれる鉄分の味が 私の舌を麻痺させる 血が流れることで私の罪が償えてる気がした 生きているだけで 誰かを傷つけ 誰かに傷つけられた 血を舐めることがやめられない 美味しい 美味しい 美味しい 傷口を舌で丁寧に舐めあげる さながら猫が毛繕いをするように いつからこうなってしまったんだろう なんで他人のいる生活に脅えていたのだろう わからない わからない けど一つわかったことがある 私の手首から流れる血が美味しいこと 私が狂ってしまったこと 血を舐めるなんて正常じゃない でもやめられない 何故? それが生きるってことだから
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