第1話

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  郵便局員、中瀬太一は、焦っていた。     配達途中、全く見た事無い道へと入り込んでしまったからだ。     地元の国立大学を卒業し、ストレートで郵便局への就職が決まったこの男。   就職で出てきたこの街は、大きな挫折の無いこの男の人生にとって、唯一無二の試練を与えたのであった。       季節は夏。       けたたましい蝉の鳴き声と共に暗くなる空が、より一層の焦燥感を生み出していた。     「何処なんだろうこの道は… 思えば昨日メガポラリス予告を外した時からツイてないな… このまま帰れなかったらどうなるんだ?       宇宙にでも行くのかな?       あ、宇宙はダメというルールだった。危ない危ない…」     譫言を呟きながらズレた眼鏡を掛け直す中瀬太一。       と、その刹那。     鋭い走りで角を曲がってきた車に遭遇する。   (あの鋭い走り…きっと地元の道に詳しい人だ。あの車に付いていけば知ってる道に出られる筈だ! 何たる幸運!もう君を離さない。絶対誰にも渡さないよ)     突如訪れた光明に、嬉々としてスピードを上げる中瀬太一。     溢れ出る爆音のユーロのビートが、心地良い安らぎのメロディーに聴こえてくるのだった。     そう、この時までは…               銀杏青心小僧
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