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悟はそう言うと軽く顎を擦って考えた後に
「お前の事、女だと思ってるんじゃないか?男だって分かったらいい話で…」
「………」
「あからさまに嫌な顔するなよ…」
や、でも悟の言う通りかもしれない。
「仕方ないなぁ…あいつ気持ち悪いし今度来たら生徒手帳でも見せるかぁ~」
いくら変態でも男だって分かったら諦めるだろう…
そう思ったのが甘かった。
その日の昼休み、あいつは現れた。俺がトイレに行ってるときに現れたあいつは、
「ねぇ、君。僕の子猫ちゃん知らない?」
「あ゛あ゛?」
教室の入口にいた吉沢先輩をうちのクラスの生徒だと思ったらしく…
ってかなんで同学年なのに知らないんだ。
先輩はあいつの問いかけに面倒くさそうに顔をしかめて直ぐに顔を反らした。
「君、僕の子猫ちゃん知らないかい?」
あいつは相当KYらしく、どんどん不機嫌になる先輩に更に畳み掛けるように質問攻めにしていた。さすがにまずいと思ったのか香緒が弁当ひっつかんで先輩の元へ
「先輩、いこ」
「………ッチ」
「あ、ちょっと君」
「え?」
「おいコラ」
「君、子猫ちゃんといた子だよね?」
香緒の腕を掴んでひき止めるから、さらに吉沢先輩の機嫌が悪くなったわけで…
「春の…事ですか?」
「そうそう」
「春ならそこに…」
「おぅ☆」
香緒が指を指した先にはトイレから戻った俺がいて
「子猫ちゃ~ん」
と走ってきた男の顔面に俺のパンチがめり込んだ。くそう、トイレで手洗ってこなきゃよかった!
「はぁ…ねぇちょっと、勘違いしてるみたいだから言うけど~、私男なんですけど」
頬を押さえて踞る男にそう言うと、キョトンとした顔をされて、すぐにニコリと笑うと
「胸が小さいくらいなんだい子猫ちゃん」
と言い出したので、胸ポケットから生徒手帳を取り出してプロフィールを開いて前に付きだした。
でも付だしたのと、アイツが俺に抱きついたのがほぼ同時で、しかも俺より遥かにでかい体でタックルよろしい勢いで抱きつかれたせいで俺の手から手帳が飛んだ。
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