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「………」
「…………」
しばらくの沈黙、やっぱり言い過ぎたかと思って口を開こうとすると
「照れなくてもいいのに~」
「…なっ?!」
突飛おしもない言葉には空いた口が閉まらないままでいると、コイツは更に笑みを深くして
「だーいじょーぶ!いくら子猫ちゃんが照れてたって僕は分かってる!心の底では僕を求め…」
―ゴッ
「痛っ」
「黙れ、もういい!便器に沈め!」
酔いしれるアイツの額に拳を繰り出すと俺は踵を返して教室へ戻る。
なんだかとてつもなくアホらしいっていうか、アイツにまともな会話をふっかけた俺が馬鹿だったのかもしれない…
「子猫ちゃん待って待って」
「は?」
追いかけてきたソイツは俺の事を後ろから羽交い締めにすると、いつもと違った真面目な声で呟く
「僕にとって大事な事は子猫ちゃんが子猫ちゃんであることだよ」
「!意味分かんないしっ」
無理矢理抜け出して振り返ったソイツはいつものように笑っていたけど、言われた言葉が妙にむず痒くて…
「それ…やめろよ」
「ん?」
「子猫ちゃんっていうの、俺子猫ちゃんなんて名前じゃないし」
「!じゃぁ…じゃぁ…
ハニー?」
―ゴッ
「死ね!」
「いたいっ」
こうして、冒頭の今に至る。
もちろんハニーなんて呼ばせるわけもなく、名字で呼ばせようとしたんだけど
『春野!俺は春野!』
『知っているよー、でも特別感がない…』
『いや、アンタに特別やんねーよ?』
『おい浩輝、昼休み終わ…』
『浩輝!うん、名前で呼びあうなんてラブラブな証拠じゃないか、浩輝』
『!?』
『じゃあまたね、浩輝』
みたいな会話の流れで名前で呼ばれてたりする…
ちなみに原因を作ったのは悟だ…。
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