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吉沢の家は「うさぎ」という名前の喫茶店。
デザートも料理もおいしくて、値段も手頃なため結構人気なお店だったりする。
「は…?」
「いや、だから。年始は1日まで開けて、それからお休みとるから手伝ってくれると嬉しいんだけど…」
吉沢のお父さんの言葉に渋い表情を浮かべる吉沢。
今は『うさぎ』でお昼ご飯をご馳走になってるところで、カウンター席で不機嫌なオーラを出しまくる吉沢と対照的に、おじさんはニコヤかな笑みを浮かべてお皿を拭いている。
「やだね。つか、正月なんて誰も来ねぇだろ、休めば?」
「いや、正月って意外とみんな暇っぽいよ?初詣帰りに寄ってくれたりさ」
吉沢は大きくため息を吐くと横でオムライスをつついていた私の頭にバフっと手を乗せる。
「俺、正月くらいコイツと過ごしてーんだけど」
「ハハ、正月くらいって最近毎日香緒ちゃんにベッタリじゃないか。香緒ちゃんは手伝ってくれるって言ったよ?」
「あ!?聞いてねーし!」
勢いよく睨まれて業とらしく視線を反らした。
「いやー…だって、いつもタダで美味しいもの食べさせて貰ってるし、正月暇だし、大変な時くらい手伝ってもいいかなぁって」
「正月初詣行きたいっつってたろ」
「良く考えたら元旦なんて人がスゴくてウンザリするかな~って」
作り笑いを向けたら案の定吉沢は不機嫌丸出しの顔で私を睨んでいた。
いやまぁ…予想はしてたけどね。
こないだおじさんから話を聞いた時はどうしようかと思ったけど、時給弾むっていうし、3食つけてくれるっていうし…?
「ほら、香緒ちゃんも一緒に働いてくれるならいいだろう?良夫が嫌だって言うなら、香緒ちゃんに頑張ってもらうけど…一人でいたら悪い虫がつくかもしれないね~…」
「やだな、おじさんそれはな…「やる」」
無いと苦笑い浮かべたら、遮るように吉沢が言葉を挟んだ。
それはもう不本意そうだけど、再度「やる」と呟くとおじさんは爽やかな笑みを深めた。
さすが父親。
荒れた不良でも扱い方はよくご存じで…
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