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「年越し蕎麦持ってきたからね」
穏やかに笑ったおじさんに、天の助けとばかりに笑顔を向けておぼんを受けとると吉沢から小さな舌打ちが聞こえたけど、あえて無視して机に蕎麦を並べる。
「良夫」
「あ?」
「清く、正しく、健全に」
「…」
おじさんは爽やかに笑って部屋を後にした。
吉沢はというと、苦虫を噛み潰したような、渋い表情を浮かべている。
「ねえ先輩。前から思ってたんだけど」
「ンだよ…」
吉沢はこちらへ視線を向けないまま不機嫌丸出しでガシガシと頭を掻きながら机の前へ座ると端を取る。
「先輩ってヤサグレてる割りにはちゃんとおじさんの言う事聞くよね」
「誰がヤサグレてんだよ」
「先輩」
「ああ?」
「あんな優しいおじさんが育ててなんでそんな…」
皆まで言わずに痛みまくった銀髪に目を向けると吉沢はフンと鼻で笑って蕎麦をすすった。
「カエルの子はカエルって事だろ」
「それを言うならおじさんと美香ちゃんのような親子だとおもうけど…」
美少女美香ちゃん。吉沢の妹。いつもニコニコと笑って優しい子。吉沢とは正反対で二人で歩こう物なら吉沢が誘拐犯に見えると思う。
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