正月パニック

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「美香は母親に似てんだろ」 「じゃあきっと先輩が吉沢家の子供じゃないのよ」 シレッと言ってのけると吉沢は口の端を上げて笑い立ち上がると部屋の本棚を漁り始めた。 私はそれを視線で追いながら目の前の蕎麦をすすって様子を見ていると、吉沢はアルバムの中から一枚の写真を持って来て机に置いた。 自然とそれに視線を向けてみる。 「何これ、先輩今より荒れてない?」 大型バイクの前で赤い特効服を来た金髪の吉沢が不適な笑みを浮かべて柄の悪いお兄さん方と写っている写真。 「アホ、良く見ろ」 そう言って吉沢が写真の右下を指先でコンコンと叩く。 「え?…………!」 指先に印字された日付は20年近く前で思わず写真の吉沢と目の前の吉沢を交互に見てしまった。 「ま、まさか…」 「親父」 「えぇええ!!」 盛大に声を上げると吉沢は目を細めてクツクツ笑い、再び蕎麦を食べ始める。 「な…だって…おじさん…」 写真の中のおじさんは、吉沢と見間違えるほどの悪どい笑みを浮かべていて、今のあのふわふわとした笑顔を浮かべている人物とは同一人物に見えないというか… 何があった!! 「今でも怒らすとすげぇぞ?滅多に無ぇけど」 なるほど…吉沢がおじさんの言うこと聞くの…分かった気がする。 それにしても、 「あ…ありえない…。ん?てことは…もしかして数年後の先輩も…」 おじさんのようにニコヤカに笑う吉沢を想像して思わず顔をしかめたら吉沢が頭に空手チョップを喰らわせてきた。 「いたっ」 「薄気味悪い想像した罰」 「なんで分かったの?」 「お前顔に出すぎ。ただでさえわかりやすい顔してんのに」 「悪かったわね!単純明解な顔立ちでっ!」 「ハッ、いいじゃねえか、俺はまどろこしいより分かりやすかった方が好きだぜ?」
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