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吉沢の家に到着して、おじさんに挨拶してから吉沢の部屋へ向かった。
すると、ノックする前に扉が開いて驚くと、吉沢は自信満々な笑みを浮かべた。
「何で分かったの?」
「内緒…つか何だそれ」
吉沢の視線が服の入った紙袋を捉える。
「服」
「買ったのか」
「うん」
「ふ~ん…どんなん」
食いつくなぁ…たぶん、普段服なんて買うとか言わないから気になるんだろうけど……
「赤い………ヒラヒラ…」
さすがにメイド服ですとは言えずに答えると、吉沢は不機嫌そうに唸った。
「嘘つくんじゃねえよ。お前、嘘つくときすぐ視線ずらすからバレバレだぞ」
「………」
そんな癖があったとは…チキンな性分だから仕方なかろうに……
「コミケの衣装です」
小さい声で呟くと、吉沢は更に興味を持ったようで
「ウエイトレスみたいなん?」
と、袋を覗こうとする。
うん、あながち間違ってはいないよ。ウエイトレス…
ただウエイトレスよりヒラヒラしてて、オプションで猫耳とシッポついてるけどねっ
「そんなとこ!暑いから部屋入れてよって…な、何でしょう…」
部屋へ入ろうとしたら吉沢がドアの端に手を着いて私を見下ろしてニヤニヤ笑ってる。
すごく嫌な予感がする…
「着てみろよ。」
ほらキタァァ…
コスプレを隠すつもりはないけど…ないけど~~!!!
「い、嫌!」
「ああ?」
「恥ずかしい!」
「どうせ着んだろうが。着るなら入れてやる」
「じゃぁ帰る」
「親父が香緒来るからっつってケーキ焼いてるけど」
「うっ」
卑怯だわ!!私がおじさんのケーキ好きなの知ってるくせに!!
「どうする?」
「………………わ、分かった…その代わり!似合わなくても文句言わないでよ!?」
「よしよし」
吉沢は満足げに笑うと入口を開けて外へ出た。
「あ、親父~。香緒がケーキ焼いてくれってよ」
「だ!騙したっ!!」
反論しようとしたらお店から和やかな声で「はいはい」なぁんて聞こえてきて、私は泣く泣く着替える羽目に……。
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