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更衣室で着替えて外へ出る。吉沢はまだ着替え終わってないみたいで、更衣室の外で待つ。
馴れない服だから時間かかってるのね、きっと。
「すみません」
「?」
声をかけられて振り返ると、そこにはカメラを持った男の人が立っていた。
「写真いいですか?」
「あぁはい、どうぞ」
男の人の前に立つと、男の人は一度「違うな~」と呟いた。
「もうちょっと儚げな表情で…」
「はぁ……」
儚げって…
とりあえずニッコリ笑って見たけど男の人はなんだかまだ不満そうだ。
早くしてよ…吉沢きちゃうじゃん…
「もう少し俯きかげんで、健気さも出して…ああ~ほら、ご主人様~って甘えた感じ…違う違うそうじゃなくて」
あああ!!!うざい!!!
儚くないし健気でもないのよ私!!!
腕組みして仁王立ちして睨み付けると、逆に男の人は頬をちょっと染めてバシャバシャと撮り始めた。
これはこれで良かったらしい…
が、いつまでも人にいちゃもん付けてるから…
「おいテメェ何やってんだこら…」
と、不機嫌オーラを出しまくる吉沢に見つかり、尻を蹴り飛ばされていた。
ちょっと良い気味だわ…
「何写真撮らせてんだ」
「いや、それも楽しみの一つだし?」
「ああ?」
吉沢が無言で差し出したベルトを受け取る。
バックルが多い上にごちゃごちゃしてるから付け方わからなかったみたい。
「きっと先輩も餌食よ」
「はあ?俺は男に写真撮られる趣味はねぇ」
ベルトを付けながら笑うと吉沢は心底嫌そうな顔をした。
「おい、騙しやがったな…」
会場で準備していると横から頬っぺたを思いきり引っ張られた。
「イヒャイ!イヒャイっへ!!」
吉沢は不機嫌そうに何度も何度も私の頬っぺたを引っ張る。
「何がこんな格好じゃねえと入れない、だ。普通の格好してるやつのが多いじゃねぇか」
「だって!そう言えばついてこないと思ったけど…ついてくるっていうなら見てみたかったし?」
「ま、まぁよしちゃん!いいじゃない!滅多にないんだから、こんな機会」
のりちゃんが苦笑いしながら吉沢の手を外す。
吉沢は舌打ちすると、ドカッと椅子に座った。
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