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こうしてふてぶてしく座る吉沢はジークそのものだわ…
隣のサークルさんも、通りすぎる人もチラチラと吉沢を見てる。
この不良顔が、普段なら人をびびらせるのにココにいるだけで゛なりきり゛だと認識されてキャァキャァ言われるんだから…
たぶん今吉沢がすごんでも周りからは『キャァ』とか帰ってくるんだろうなぁ…
開始から一時間、吉沢効果か人だかりができていた。
「スケブお願いしていいですかぁ~?」
チラ
「すみません、これください」
チラ
来るお客さんが吉沢ジークを見てはポッと顔を赤らめていく。当の吉沢は気にするでもなく私が持ち込んだ漫画を読んでいた。
「よしちゃんパワーってすごいね」
「吉沢ジークサマサマね」
この勢いだと完売するんじゃないかしらとニヤケてしまう。
「あの~…」
「はぃ…ひっ!!??」
目の前に現れた人物を見て思わず悲鳴を上げてしまうとその人は気にするでもなく、右手を高く突き上げてポーズを決めた。
「僕、アンパンマン!!そこの彼と写真、いいですか!」
そう、目の前の人物はピチピチの衣装に、顔を茶色に塗りたくったアンパンマン…
しかも吉沢とそんな変わらないんじゃないかってくらいの長身…因みに頭はツルツルだ…
さすがにのりちゃんも呆然とアンパンマンを見上げている。
「えと…あの…ちょっと待って下さいね」
私はなんとか笑顔を作ると座っている吉沢の足を軽く叩いた。
「先輩」
「ああ?……………」
吉沢までも、軽く顔を上げてアンパンマンを認識すると、その表情のまま固まった。
「アンパンマンが写真一緒にって…」
「アンパン………」
吉沢は眉を寄せてアンパンマンを睨み付けた。
というより『これアンパンマンか?』って感じなんだろうけど…
「是非!ジーク殿!」
ポーズを取ったままのアンパンマンが力強く言うと吉沢は心底嫌そうな顔をした。
「ふざけんな」
「せっ先輩!」
「さすがジーク殿!」
アンパンマンは吉沢がジークになりきってると思ってるらしく、舌打ちしようが睨み付けようが果敢にアタックし続ける。
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