26人が本棚に入れています
本棚に追加
「 …っく。……ひっく 」
長い黒髪をツインテールにした、女の子がボロボロ涙をこぼして泣いている…
服は泥んこ、身体は擦り傷だらけ、髪もボサボサ。
ただ…
「 あきらなんかだいっ嫌い!! 」
少女の瞳は怒りに燃えていた。肩幅に足を開き、眼前をキッと睨みつける。
手には大事そうに抱えられた、くまのぬいぐるみ。 しかし、そのくまは少女と同じく泥んこでボロボロ。その上、中の綿がところどころ飛び出している。
あきら、と呼ばれた少年は困ったような顔をした……と思うが、顔の部分が暗くてよく判らない。
「 あきらとは、もう遊ばない!! 」
「 ―――――! 」
踵を帰し走り去って行く少女。
その背中に、少年は何か叫んだ。謝って…いたのだろうか…
そんなことを考えていると、場面がパッと切り替わる。
少女が家に帰った所のようだ。母親がひどく驚いている。
「いったいどうしたの!?」
「ヒクッ…母さん…ごめんね…
誕生日のプレゼントに貰ったベアが破れちゃった…」
「そんなことはいいから…何があったの?」
「あきらがね…犬の玩具にしちゃったの…
やめてって…ダメって言ったのに…」
「そう……」
母親は息をゆっくりと吐いた。
「お金持ちの子だからかしら?」
小さく呟く。
「ごめんねお母さん…」
「謝らなくていいわよ。カグヤちゃんは悪くないでしょう?」
「でも、ベアが…」
「それは大丈夫♪
ママに任せなさい!
ママの腕は魔法の…」
…………
――――――
最初のコメントを投稿しよう!