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「………」
心地よさのあまり、あのまま眠ってしまったらしい。
私はうすぼんやりと意識を取り戻した。
そう、あの小さな女の子は私。
あの夢は私の嫌な思い出。
嫌な思い出な癖に古すぎるからか、微妙にぼやけてしまっている。そんな曖昧な記憶。
だから、男の子の顔は覚えていない。
覚えているのは『あきら』という名前だけ。
私はゴロンと寝返りを打った。床がフカフカしていて気持ちいい。
嫌な夢だったが、身体は布団にくるまれ、ポカポカと温かい。本当に今日は雨じゃなくて良かっ…た?
(え?)
私はガバッと跳ね起きた。布団がズリ落ちるが気にしない。
(ここはどこ?)
ざっと見渡して目に入るのは、ピンクの壁紙、アンティークな木製の長机に椅子。
窓に掛かっているレースのカーテンは、どう見たって高級品。
私が寝ていたのは、ピンクのソファーで、枕替わりになっていたクッションはハート型。
学園敷地内のどこか一室だろうとは思う。
プラスするならば、高い確率で女の子の部屋だ。
「あ。目覚めた?」
奥から飲み物の入ったマグカップを持って、ミディアムショートヘアの少女が入って来た。
青いフレームの眼鏡が彼女の知的美しさを上げている。
ソファーに座り治した私に、彼女は「はい」と片方のマグカップを差し出してきた。
受け取ると、ふんわりコーヒーの香りが立ち上った。
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