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「 カグヤちゃん。荷物の中に一つぬいぐるみがあったけど、なんで? 」
ユナちゃんの声に私が振り向くと、彼女はドアの所で、ぬいぐるみを抱えて立っていた。
それは、つばが青い赤色のキヤップを斜めに被り、青いオーバージーンズにカラフルなTシャツを着たテディベア。ほっぺには絆創膏のアップリケをしている。
名前はベア。
そう、夢に出てきたくまのぬいぐるみだ。
『ママの腕は魔法の腕なのよ♪』
あの後、その宣言通り母さんは、綿を足して破れた所を綺麗に繕ってくれた。
その上繕った所が目立たないように帽子と服まで作ってくれたのだ。
『こうしたらヤンチャ坊主みたいよね』
最期にベアのほっぺにアップリケをあてると、母さんは満足そうにそう言った。
『ほら、カグヤちゃんとお揃い』
私のほっぺの擦り傷にペタリと絆創膏を貼って、ふふふ…と笑った母さんの顔は今でもよく覚えている。
「 小さい時、誕生日プレゼントに貰ったの。
大事な思い出の品なんだ。名前はベアって言うんだよ 」
「 ふーん 」
ユナちゃんは部屋に入って来ると、ベッド脇のサイドテーブルの上にちょこんとベアを座らした。
「 家族との思い出の品かぁ…
なんか良いね、そう言うの 」
ベアの頭を撫でながら、しんみり呟くユナちゃん。
「 ユナちゃんはないの? 思い出が詰まった物 」
「 思い出が詰まった物はあるよ。家族との思い出の物が…ね…無いんだ… 」
そのまましょんぼりしてしまったユナちゃんに、私は慌てて話題を変える。
「 藍ちゃんとは中学から仲良いの? 」
「 ううん。幼稚園ぐらいからの幼なじみなの 」
「 へぇー、そんな時から仲良いんだ。
あ、通ってた中学校ってどんな所? 」
「 女子校でね、マナーとか校則とかがスッゴク厳しい所だよ。わたしのスカートが、人よりちょーっと短いからって、反省文50枚書かせるんだもん。
スカート短くしたって似合うんだからそれで良いじゃんって思わない? 」
「 ごめん、私の所校則緩かったから、膝上10センチのミニはオッケーだったの 」
「 えーっ、いいなぁ!わたしもカグヤちゃんの学校行けば良かった! 」
「 あんたの場合カグヤの学校でも、校則違反だったと思うわよ? 」
その声に振り向くと、藍ちゃんがドア枠にもたれて立っていた。
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