買い物

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「カグヤついたわよ。 ここが西の購買部。」 そう言って藍ちゃんはドア口の上にある、購買部と書かれたプレートを指差した。 学園内共通の重厚そうなドアには筆記体で West と焼印のような色合いで書いてある。 中へ入ってみれば、まず目に付いたのが山盛りの果物。 トレーに行儀よく並べられてはおらず、陳列棚に山盛りにして積んであるのだ。 イメージは海外のスーパーだろうか。 奥に進めば野菜も同じように個包装されておらず山盛り。 肉はその場での計り売り。 魚は水槽から欲しいものを選ぶようになっている。 「びっくりした?」 藍ちゃんはクスリと笑って私を見た。 「寮生活って結局のところ、一人暮らしでしょ? だから、包装はなるべくしないようになってるの。 肉もパック詰めすれば、詰めたぶんは売れ残ったら無駄になっちゃうし。魚もそうよ。」 「へぇ~~」 私は感心しながらも、カゴを手に取り、必要な野菜を選ぼうとしてハタと気づいた。 「ねぇ、値札がついてないんだけど。」 そう、買いたい品物と値段がつりあってるか、安いのか高いのかを判断するための値札がついていない。 「あぁ、ここでは必要ないわよ?」 「え?」 戸惑う私に藍ちゃんが問いかけた。 「食堂で食べるときにお金は掛かる?」 「かからない・・・」 学費・その他もろもろの資金免除の中に含まれているため、かからない。 「でしょ? 食堂がタダで利用できるのに、自分の部屋で作る料理にお金がかかるのは変な話になっちゃうわ。 だから値札がついてないのよ。」 ということは…イコール、タダで買い物できる!! 目を輝かせた私に、藍ちゃんはクスクスと笑いをこぼした。 「じゃぁ、好きなものを作っていいのね!」 普段ならば買えるものの範囲でメニューを組み立てるが、作りたい献立から材料が選べるなんてすごい素敵だ。 私は何を作ろうかと、店内を回り始めた。
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