2001年4月 起床の怒り

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   「昨夜は、私の就職祝いと有木の誕生日を家族で祝して貰いましたが‥‥。それより貴方は何故私に手招きしたのですか?」  男は昨夜、有木が私にくれた――間違い無い!セレナイトのペアネックレスを私の前にぶら下げて見せた。  男の質問も行動の意味も。持っている有木とのペアネックレスの意味も。全く解らない。  新たに人混みに対し、更に気に成ったのは、やっぱり男の持ったペアネックレスの事だった。  「これ、彼氏‥有木君の物に間違い無いかな?見覚え‥‥有るよね。君の付けてる物と同じみたいだけど」  落ち着いて、ゆっくり話す男の質問に私は只頷いた。 そして視線を変える。気付くと離れの人混みは高層ビルと高級マンション、更には私の住むアパートの前へと徐々に拡大されて居た。  有木のネックレスを男の手から取り上げようと、私は手を差し出し一言。 「落とし物、届けてくれて‥‥」  言葉が自然に止まった。  よく考えてみると、有木のネックレスと知っている男への疑問も膨らむ。只、私のネックレスと同じだから。と、それだけでは納得出来ない。  全く朝から疲れる事ばかりを考えて居た為、取り敢えず男に訪ねる。  「何故、有木のネックレスだと解ったんですか?」  再度私は男の持つ有木のネックレスに手を伸ばす。と、男は静かに応えた。  「悪いが今はまだ返せないんだよ‥‥」  私の頭は空回りの繰り返し。何故、此処に居るのか、何しに来たのか、男は何の為に――。  考え出したらキリがない程、意味不明の男へ対する疑問が山積みに成って居た。
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