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そして私は有木に逢いたい必死の想いで一杯に――。当たり前の感情だった。
立ち竦んだ私を前に、男は胸ポケットから取り出した煙草を加え、ゴールドの眩しいライターで火を着けた。
苦い表情で空を見上げ暫く――。
男はゆっくり有木のセレナイトのペアネックレスを、私の前にぶら下げて来た。セレナイトは太陽の陽射しを浴びて七色の鮮やかな虹を放つ。それは泣いて居る様にさえも見えた。
「死因は明確では無い!が、有木が亡くなった事は事実。と、言う事だ。‥‥借りてた宝は君に返すよ」
男は口から煙草の曇った煙を下向きに吐きながら、一言残して又進もうとした。
「待って!‥‥お願いっ。
有木に逢いたいっ!有木に‥‥。
貴方、有木の居場所‥」
男はビルの下に見える燃え盛る様な人混みを指差した。首を90度斜めに降り『来い!』と、ジェスチャーをして黙って一人、静かに歩き始める。
私は只、焦りの思いで、男の後を追って居た。
「大丈夫なのか?」
私は無口で足を止められ、俯いて歩けない。此処迄も追いつめられたのは初めてだった。
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