真冬の出来事 1999年12月

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 「別にっ‥‥」  「あのなー、俺は真剣に聞いたのに何で簡単に応えるのかなぁー!?」  「知らないわよっ。 私だって真剣に応えたっつーの」  「そっかぁー? ‥‥それじゃ今日から俺と付き合って貰えますか?」  冗談混じりの男の言葉は、まるで漫画の世界の様で、私は黙って頷きながらも改めて――。  「学生証、有難う」  と、私を覗き込んで来る彼に向かって小さな声で呟いた。その時の私は、なんだか弱気な自分を見られた気分で、少しだけ悔しい思いが過ぎった。  学生証は大切な物!一週間前に友達とカラオケに行った時、何処かで無くしてしまったのだ。その為に、親には言えずに内緒で隠し通し、ずっと探し続けて居た物だった。  そぅ!私は、牧野結花 【まきの ゆか】 来年は高校を卒業して就職を考える、のんきで短気な好奇心旺盛の17歳。 高校2年生の寒い冬。  彼は、南雲有木 【なぐも ありき】 案の定年上の、22歳と聞かされた。  私達は、寒い夜の街道の上、ほんの僅かな数時間の間で、付き合う事に成った。  まるで夢の様な悪夢の様な――普通なら余り無い。嘘の様な出逢い!  私には信じ難い、真冬の出逢いに遭遇したのだ。
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