隣の部屋

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 扉が開いて、大家さんが中に案内してくれた。ガランとした室内は静まり返り、人が生活しているような気配はない。  段ボールが届く前の私の部屋と同じような、ただっぴろい部屋を、何だか夢を見ているような気持で眺めていた。  キーンという音が聞こえる静かな空間に異様な虚しさを感じた。  「もう何年も、この部屋にはだれもいないんですよ。」  申し訳なさそうに大家さんが口を開いた。  そしてまたしばらくの静けさの後、お父さんが言った。 「精神科に行こう。」  自分の中で規則正しく回っていたと思っていたものが、実はずっと前から狂っていた事実を突き付けられたようで、自分が「普通」の網の中から、こぼれ落ちてしまっていたように感じて、泣くこともできず、ただ茫然と現実逃避をしているしかなかった。  私は無表情でその空虚を眺めていた。  静かな部屋は、いつまでも静かなままだった。
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