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「私、花って大好きなの。良い香りは気分を落ち着かせてくれるし、綺麗な色は目を養わせてくれる。存在するだけで幸福(シアワセ)を与えてくれる花って、この世界の一番の宝だと思わない?」
ニコニコとしながら語る少女に圧倒され、クロムはおずおずと頷いた。
「貴方も花は好き?」
「………」
何も言わないクロムを、少女は返事を催促するかのようにじーっと見つめる。
居心地の悪くなったクロムは、本当に小さな、聞き逃してしまいそうな程小さい声で「好きです」と答えた。
それを聞いた少女は、嬉しそうに目を細めた。
「貴方は何の花が好き?因みに、私は時計草が好きなの」
さらに質問を重ねる少女。
クロムは助けを求めるように視線を彷徨わせたが、今の状況から彼を救うものは何一つなかった。
こういう場合は、人と会話するのも仕方ないよね……?
だんまりとしていたクロムは意を決したように少女を見、静かに口を開いた。
「……アイリス……、アイリスが好きです」
「―――えっ……!?」
クロムの言葉を聞いた刹那、少女は急に頬をほんのり朱く染めた。
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