花を愛する少女

3/12
前へ
/24ページ
次へ
「私、花って大好きなの。良い香りは気分を落ち着かせてくれるし、綺麗な色は目を養わせてくれる。存在するだけで幸福(シアワセ)を与えてくれる花って、この世界の一番の宝だと思わない?」 ニコニコとしながら語る少女に圧倒され、クロムはおずおずと頷いた。 「貴方も花は好き?」 「………」 何も言わないクロムを、少女は返事を催促するかのようにじーっと見つめる。 居心地の悪くなったクロムは、本当に小さな、聞き逃してしまいそうな程小さい声で「好きです」と答えた。 それを聞いた少女は、嬉しそうに目を細めた。 「貴方は何の花が好き?因みに、私は時計草が好きなの」 さらに質問を重ねる少女。 クロムは助けを求めるように視線を彷徨わせたが、今の状況から彼を救うものは何一つなかった。 こういう場合は、人と会話するのも仕方ないよね……? だんまりとしていたクロムは意を決したように少女を見、静かに口を開いた。 「……アイリス……、アイリスが好きです」 「―――えっ……!?」 クロムの言葉を聞いた刹那、少女は急に頬をほんのり朱く染めた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加