70人が本棚に入れています
本棚に追加
美しい色とりどりの花が咲く丘に、花束を持った少女と少年が佇んでいた。
風に揺れる花々。
さえずる小鳥。
空は青く、澄み渡っている。
しかし、彼女達の表情は暗い。
「ねえ……。私、本当にあなたを愛してたのよ……?」
少女は小さく呟き、静かに涙を流す。
力を失った水滴はポタポタと、少女の抱えている花束へ吸い込まれるようにして落ちていく。
そんな少女を、少年は支えるようにして抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫だよ……。あいつもちゃんと気付いていたから……」
「――そうだと嬉しいわ…」
優しい風を肌に感じながら、少女は柔らかく微笑む。
「大好きよ、クロム。私が最後に言った言葉を憶えているのなら、お願いだから、また―――……」
最初のコメントを投稿しよう!