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「ウィル様、クロム様。お早うございます。
本日の朝食は、スクランブルエッグにひよこ豆のスープ、クロワッサン、そしてデザートは苺とブルーベリーのヨーグルトになります」
丁寧な口調で朝食のメニューを述べる少女に、柔かな表情をした少年が微笑みを向けた。
「うん、お早う。いつも朝から有り難う、リーシャ」
「いえ、お二人方に召し上がって頂けるだけで私は十分ですから……。―――それでは、失礼致しました」
毎日毎朝、日課のように交わされる会話。
しかし、私はいつも一言も言葉を発っせられない。
望まれて生まれてきた者同士の会話に、私のような者が口を挟んだら許されない気がして……。
ウィル様はこの国の王子。
そして、私はそのクローン。
王子の影武者として、毒味役として、もしもの時の臓器提供者として―――……。
その為だけに、私はここに存在する。
私はウィル様と違い、死ぬ為だけに生まれてきたのだ。
――この、まがい物の命に生かされて。
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