表と裏の存在

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「……クロム、今日もリーシャと話さなかったね……」 ウィルは困ったような、それでいて哀しみを帯びた目をクロムに向ける。 クロムは軽くため息をつき、ウィルに返事を返した。 「私が口を挟むのはどうかと思いまして……。それに、あの事を彼女に知られる訳にはいきませんから」 私がクローンという事実は公にされていない。 その事は、城に住む人間でも一部の者にしか知らされておらず、他者には、ウィルとクロムは双子の兄弟であると説明しているのだ。 クローンという存在は道徳に反するものだから――…。 そういった理由から、私がクローンだという事は隠蔽されているのだ。 そしてクローンである事がばれぬように、その事を知らない人間とはなるべく話さぬよう言われている。 話してもいいと言われたとしても、きっと私は話さないだろうけれど。 道徳に反する反さないの前に、そんな事実を人に知られたくない……。 そんな想いが心の片隅にいつも潜んでいるのだ。 そう、どんな時でも。 忘れる事など出来はしない。
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