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「っとその前に、いつも言ってるけどその敬語やめないか?私達は『兄弟』だよ?」
「……私はウィル様とは違う存在ですから」
私はウィル様と違う。
ウィル様はこの国の表の存在で、私はこの国の裏の存在。
私がどんなに表の世界を求めても、私の存在そのものが私を裏の世界に縛り付ける。
そして、それは一生続く。
逃げる事など出来ない。
皮肉な事に、一生――…。
「まあいい。取り敢えず食事をいただこうか?折角の料理が冷めてしまう」
「はい。そうですね」
クロムは返事を返すと、ウィルが料理に手をつける前に素早く料理を口に運んだ。
そしてゆっくりと咀嚼し、飲み込む。
ゴクリと喉を鳴らした後、クロムはホッと息を吐いた。
――良かった……。
問題無い。
クロムは安心した表情を浮かべ、美味しそうに食べるウィルの姿を盗み見する。
何の異常もなく食べる様子に、クロムは再び安堵の息をついた。
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