表と裏の存在

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以前、国王様がウィル様に毒味係りをつけようとした事がある。 しかし、ウィル様は「人の命をなんだと考えている!」と怒り、毒味のために雇った人間を、片っ端から辞めさせてしまった。 ウィル様は優し過ぎる。 他者の命を大切にするのはよいが、自身の命の価値についてあまり考えていらっしゃらない。 優しき王子の命が失われる事によって、嘆き悲しむ民が幾千もいる事にウィル様は気付いているのだろうか……? ウィル様が毒に冒される事を心配に感じた国王様は、いつも側にいる私に毒味としての役目を果たすようおっしゃった。 ウィルにばれたらうるさいから、気付かれないように注意を払いながら毒味をしなさい、と。 そしてその日から、私の存在理由に『毒味』が加わった。 「……クロム?どうした?食欲がないのか?さっきから手が止まってるけど……」 「――いえ、大丈夫です。少し考え事をしていただけなので」 そう言い、クロムは止まっていた手を動かす。 影での思惑を悟られぬよう、無表情を装いながら。
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