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食事が終わると同時に、ウィルはクロムに申し訳なさそうな顔を向けた。
「クロム、ごめん……。実は、ちょっとお父様に呼ばれてて……。何か大事な話があるみたいなんだ。今日町の様子を見に行く約束だったけど、延期して貰ってもいいかな?」
「はい、大丈夫です」
クロムはコクリと頷く。
その返事を聞いたウィルは、ホッとしたように息を吐き、柔和な笑みを見せた。
「そう言ってくれると本当に助かるよ。じゃ、また昼に会おう」
「はい。国王様によろしくお伝え下さい」
「ん。分かった。伝えておく」
そのまま、ウィルの姿が見えなくなるまで、ぼんやりとその背を見つめていた。
自分とは違い、皆に必要とされている王子様。
羨ましいと思わないこともない。
だからといって、自分の立ち位置が変わる事など決してないのだか――…。
クロムはそっとため息をつき、少々うつむきながら歩を進めた。
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