表と裏の存在

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クロムは唐突に顔を上げ、キョロキョロと辺りを見回した。 甘い香り……? でも、一体何処から? 何処からか漂ってくる、甘い蜜のような香り。 クロムは不思議そうな面持ちをしながら、その香りに誘われるようにして歩いて行った。 辿り着いた場所は城の中庭。 美しい花々が咲き乱れている。 赤、青、黄色――…、様々な色彩を彩る花からは、蜜の濃厚な人をも引き付ける甘い香りが放たれていた。 「ここからだったのか。それにしてもいつの間に……」 確かに、この前この道を歩いた時は花など咲いていなかった。 それとも、見落としただけなのだろうか……? ぼんやりとしながら、一変した風景を眺める。 ぼーっとしていると、不意に肩をツンツンと突かれた。 慌てて振り返ると、そこには空のような青い瞳を持つ、キャラメルブラウンの髪の少女がニッコリと笑いながら立っていた。 綺麗でふわふわとした髪を風になびかせた、ウサギのようなくりんとした目の可愛らしい少女が。
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