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「……あんた、頭大丈夫?」
「!?!?」
幻滅だ。もうこの一言しかない。
幻滅だ。
「は……はぃ?」
きっと錯覚だ。暴言が彼女の柔らかな口から聞こえたかのように思えたが、きっと錯覚なのだ。そう、錯覚に違いな、
「てか何? うぇ……ニンニク臭い……そこどいてよ。そっちに行きたいっつーか」
幻滅。
せったく吸血鬼としての、過去の栄光時代を思いだしかけていたというのに……なんだ。いきなり血の気が引いてきた。
幻滅だ。いや、もう幻滅なんて通りこし、頭に血が上ってきた。
「な、何ですか!? いきなり人様に! あ、あなたはそれでも女性ですか!?」
「うわっ、きも……差別ぅ」
そう言いながら女性――いや、女は私をまるで腐臭のただよう汚物でも見るかのような目をむけてくる。
「な、ななな!」
「いいからさっさどいてよ。 ほんっと、うざい」
こ、このアマ……私の人生でもっとも気に食わない女だ。こんな奴の血を吸いたくなっただなんて思うと嫌気がさしてきた。
「わかりました! もう勝手にしてください!」
「あたしの勝手だっつーの……」
ふ、ふはは……可愛げのない女だ。その美しい面の中に悪魔が住み着いておるわ。
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