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私のこの鋭き八重歯を見よ。
この鋭き牙が私達一族の証。
私の牙を少しでも見たら、誰もが私の存在を知り、地を這いずってでも逃げ出すほどの恐怖を覚える。
私達一族は気高き吸血鬼。
あの眩く輝かしい夜を華麗に飛び交い、美しき人間の血潮をすする一族。
人間達の血潮は何と甘美なのであろう。牙を伝い、体中に響きわたるあの味覚と口当たりを一度口にした我らには、人間の生き血無しには生きてなどいけない。
今宵もまた、凶暴なこの自慢の牙があの甘美たる血潮を求め、疼いて――
――いたあの心を、いったい私はどこに落としてしまったのだろうか。
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