第一話

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 痛た……。あぁ、こんな惨めな思いをするだなんて……。昔の私とまるで真逆ではないか。  昔の私なら、夜の街に一足踏み出しただけでも女子たちが私の雄雄しさに吸い込まれるかのように集まってきたものだ。数多の美女を手玉にし、もてあそんでいたあの時代は何処へ? 今となってはただのヘタレたオヤジではないか。いや、ニンニク臭のただようヘタレたオヤジだ。  失敗に終わったのだろうか……いや、あれは正しかった。あの行いがあったから私はニンニクという宝に出会えたのだ。 吸血鬼の弱点とするニンニクを克服すべく、毎日少しずつでも、心臓が止まるような激痛を感じてでも食べ続けた。そのおかげでもはや私はニンニクなどただの食材だ。いや、違う。美味な食材だ。主食にしてもかまわない。  これがニンニクの恐ろしさなのだろうか……。もはや私はニンニクを食して以来、人間などの血を吸う気がまったくしないのだ。どんな美女であれ、どんなブスであってもまったく血をいただく気になれないのだ。  そんな時、旧友の吸血鬼が私に「輸血用の血をかっぱらってきた」などと言って持って来たことがある。
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