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「へぇ~そうなんだ、あ、そうだ、せっかくだから、寄ってみない? すぐ近くだから」
「あ、でも……」
こちらを伺いながら、答える氷。
「遠慮なんて要らないわよ? 教え子が会いにくるなら姉さんだって喜ぶと思うし」
確かに行ってみたいとも思う。
今まで自分の握っているモノに自信が持てなかった俺は一度も行った事はない。
行って日向さんに出会ってしまったら、抑えていた感情が溢れ出しそうになっただろうから。
自分の孤独や悲しみ、悔やみなどをすべて吐き出しそうになってしまっただろう。
だが、今は大丈夫だ。
自分を見失わない。
もう、失わない。
失わせない。
「そうですね、せっかくなんで寄らしていただきます。……いいよな、氷?」
「そうね、どうせこの後は勝手に夏樹の家に上がりこんで小春ちゃんとお話するつもりだったし…」
「おまえな……」
俺らのやり取りを楽しそうに見ている奈月さんが俺達を連れて歩いていく。
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