第1話 夕暮れの中で

4/5
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
『6時に屋上にいます』 そんな感じのメモを彼の机の中に放り込んだのは、今朝のことだ。 相手は小学校から絵美と中のいい、藤原康太。 メールではなく、あえてメモ書きで呼び出したのは、それだけ真剣さを伝えたかったからである。 屋上へと続く階段の下までやってくると、絵美は大きく深呼吸をした。 そして胸の鼓動が速くなるのを感じながら、恐る恐る階段を上って行く。 その時、絵美はあることに気がついた。 屋上のドアが、わずかに開いている。 そして、その前に無造作に置かれたバケツとモップが目に飛び込んでくる。 「まさか……」 絵美は息を呑むと、慌てて階段を上がって行った。 わずかに開いたドアの隙間から、風に乗ってかすかに会話が聞こえてくる。 声の主は、間違いなく洋子と康太だった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!