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「俺じゃなきゃダメなのか……?」
「うん、康太君しかいないもん」
「しかしなぁ……」
洋子の言葉に、困惑した反応をする康太。
「お願い……」
沈黙がおとずれる。
ドアの向こうでは絵美がぐっと息を呑み、次の言葉を待っている。
「よし、わかった」
「本当!? ありがと~」
洋子の嬉しそうな声を聞くなり、絵美はよろよろと階段を降り始めた。
「帰ろっと……」
洋子と康太なら、きっとお似合いのカップルだろう。
そう自分の胸に言い聞かせながら、絵美は学校を後にした。
――その一方、屋上では、康太が大きなベンチを運んでいた。
「こりゃ確かに重いな……女にはキツい」
「でしょ? だから、男の子が他にいなかったし、康太君に頼むしかなかったってわけ」
「よいしょっ。ふう……」
康太は屋上の隅にベンチを下ろすと、その上に腰を落とし、赤く染まった夕陽を眺めた。
そして制服のポケットから、小さなメモ書きを取り出す。
「鈴木のやつ、どうしたんだろうな……」
そうつぶやく康太だったが、その答えは誰にも分からなかった。
END
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