第1話 夕暮れの中で

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「俺じゃなきゃダメなのか……?」 「うん、康太君しかいないもん」 「しかしなぁ……」 洋子の言葉に、困惑した反応をする康太。 「お願い……」 沈黙がおとずれる。 ドアの向こうでは絵美がぐっと息を呑み、次の言葉を待っている。 「よし、わかった」 「本当!? ありがと~」 洋子の嬉しそうな声を聞くなり、絵美はよろよろと階段を降り始めた。 「帰ろっと……」 洋子と康太なら、きっとお似合いのカップルだろう。 そう自分の胸に言い聞かせながら、絵美は学校を後にした。 ――その一方、屋上では、康太が大きなベンチを運んでいた。 「こりゃ確かに重いな……女にはキツい」 「でしょ? だから、男の子が他にいなかったし、康太君に頼むしかなかったってわけ」 「よいしょっ。ふう……」 康太は屋上の隅にベンチを下ろすと、その上に腰を落とし、赤く染まった夕陽を眺めた。 そして制服のポケットから、小さなメモ書きを取り出す。 「鈴木のやつ、どうしたんだろうな……」 そうつぶやく康太だったが、その答えは誰にも分からなかった。 END
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