27人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
写真には、1人の上品そうな少女が映っていた。
しかし、その表情は悲しみに溢れ、大粒の涙を流している。
その脇には、少女の父親と思われる禿げたオッサン。右半身しか映っていないが、直球のカメラ目線だ。
それを見たコナは、カッと目を見開いた。
「こ、これは……うちから徒歩2分くらいのところにある屋敷のセシルお嬢様じゃないですか」
ブルートが深刻な表情でコクリとうなずく。
「へい……実は、セシルお嬢様の、パパより大切な宝物が盗まれたそうなんです」
「宝物? ま、まさか……」
『宝物』を脳裏に思い浮かべ、戦慄するコナ。しかしブルートは、容赦なく言い放つ。
「へい、あのクマのぬいぐるみです〓」
コナは脱力したように椅子に腰を落とした。
「まさか、よりによってあのクマサンとは。あの、ルビーやらダイヤやらがゴチャゴチャ張り付いた、可愛くも何ともないし悪趣味だけど、値段だけは高価な、あのクマサンとは……」
「親分、殺されますぜ……」
ポツリとつぶやくブルート。しかし、コナは完全に自分の世界だ。
無駄に額に脂汗を浮かべ、頭を抱えている。
「これは黙っているわけにはいきませんね。ブルート君、すぐ出陣です
最初のコメントを投稿しよう!