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手紙には一言。
『拝啓、橘 祐樹殿。
この魔法学園に入学することを命ずる....。』
とこう書かれていた。
宛名には『愛を込めて』と書いていたのに中身は命令口調というか…。
とにかく、矛盾してる。
「命令形かよ!?」
その呆気なく、すごくわかりやすい一言に思わずツッコミを入れた。
そして、何だか馬鹿馬鹿しく思えて、ある結論に出た。
「よし、無視しよう!」
冷静に考えると、そもそも入学する意味がない。しかも、今は現に高校に在学してる。
だから入学する必要はないのだ。
「…それは困るわ」
「……え」
母さんがポツリと呟く。
そして唐突に―…
「祐樹は学園へ行きなさい」
「母さん!?」
「行きなさい」
二回、まるで幼子に言い聞かすかのように母さんは…今までにある優しい、悪意のない声音で祐樹に囁いた。
表情はにこやかに微笑んでいる。
「無理だよ」
祐樹の返事は即答だった。気持ちは変わらない。
「魔法は嫌い?」
「嫌い…ではないよ」
「なら、どうして?」
「そんなの決まってる。母さんも知ってるだろ――…」
自分が学園へ行きたくない―…行けない理由を。
知っているはずだ―知らない訳がない。
行けない理由…
それは―…
「僕には《魔力》がないんだぞ……」
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