一章~15歳ノ誕生日~

9/29
前へ
/67ページ
次へ
『よかったあ…冬護の旦那覚えてた!』    雛は上機嫌で階段を駆け上がる。お次は3階。西側から3つめの部屋。  そこで雛はハッとし、上機嫌で上がっていた眉は再び眉間に集中する。   『くっ…』    雛は苦虫を噛み潰したような顔をして、ドアを見つめる。そこには、紫色のスプレーで大きく書かれた《グーシオン》の文字。  雛は思った。「こいつがあのことを覚えているわけがない」と。しかし、雛は気持ちを落ち着かせ、ドアをノックする。   『あーちょっと待て』    低く、特徴的な声が返ってきた。雛は『あい』と言って大人しく待つ。    数分後、   『早く入って来いよ』    と言われたので、雛は「そちらの招きが遅いんだ」と思いながら渋々部屋の中へ入った。      
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加