序幕「不運の裏は幸運で、幸運の裏は不運」

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「それで…、京ちゃんは新撰組に入るつもりなのね?」 「……新撰組、か。 仕事はいつも命懸けだぞ? 年齢も何も関係ない。 新撰組ってだけで、命を狙われるんだ。」 姉と師匠が真剣な顔を向けてくる。 どっちも何が言いたいのかは分かってる。 だけど、それは前々から覚悟していたことだ。 「それは十分、分かっているつもりです。 でも、それで躊躇していたら、幕府も天子様も護れません。 お願いします。僕を新撰組に行かせて下さい!」 「…京ちゃん…。」 僕は精一杯の誠意をこめて、頭を下げた。 姉の心配する気持ちと葛藤する様子が、伝わってくるようだった。 静寂がその場を包み、しばらく誰も口を開かなかった。 やがて、姉が静かに口を開く。 「…京ちゃん、武家の女なら…気持ち良く送り出すのが道理よね…。」 「椿さん…。」 「姉上…。」 姉がとても切ない表情で言うから、思わず気持ちが揺らいでしまいそうになる。 でも…、姉は次の瞬間、表情をぱっと変えて…とてもとても、それは爽やかに言った。 「だから、いってらっしゃい、京ちゃん! もう家に帰って来たら、駄目ですからね!」 この時、僕は姉の言葉は単なる励ましだと思っていた。 だけど、この言葉が後に僕を散々泣かせることになるなんて、予想もしていなかった…。 アァ、僕って…やっぱりツイてないのでしょうか…。
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