230人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
「それで…、京ちゃんは新撰組に入るつもりなのね?」
「……新撰組、か。
仕事はいつも命懸けだぞ?
年齢も何も関係ない。
新撰組ってだけで、命を狙われるんだ。」
姉と師匠が真剣な顔を向けてくる。
どっちも何が言いたいのかは分かってる。
だけど、それは前々から覚悟していたことだ。
「それは十分、分かっているつもりです。
でも、それで躊躇していたら、幕府も天子様も護れません。
お願いします。僕を新撰組に行かせて下さい!」
「…京ちゃん…。」
僕は精一杯の誠意をこめて、頭を下げた。
姉の心配する気持ちと葛藤する様子が、伝わってくるようだった。
静寂がその場を包み、しばらく誰も口を開かなかった。
やがて、姉が静かに口を開く。
「…京ちゃん、武家の女なら…気持ち良く送り出すのが道理よね…。」
「椿さん…。」
「姉上…。」
姉がとても切ない表情で言うから、思わず気持ちが揺らいでしまいそうになる。
でも…、姉は次の瞬間、表情をぱっと変えて…とてもとても、それは爽やかに言った。
「だから、いってらっしゃい、京ちゃん!
もう家に帰って来たら、駄目ですからね!」
この時、僕は姉の言葉は単なる励ましだと思っていた。
だけど、この言葉が後に僕を散々泣かせることになるなんて、予想もしていなかった…。
アァ、僕って…やっぱりツイてないのでしょうか…。
最初のコメントを投稿しよう!