序幕「不運の裏は幸運で、幸運の裏は不運」

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京介が新撰組に入ることを決めたその同じ日、新撰組1番隊組長、沖田総司は、この上なく嬉しそうな顔をしていたという。 それは、仲間の隊士の誰もが気味悪がるまでに。 「……ねぇ、総ちゃん、あんた本当にどうしちゃったの? 気味悪くて…。」 煌々と光る不気味な紅い月の下、沖田は相変わらずニコニコして月を眺めていた。 そこへ近寄って来た美しい女性が、ついにその理由を本人に尋ねた。 「ふふ。山ネェ、聞きたい?」 沖田は振り返ると、悪戯っぽく女性に反対に問い掛ける。 女性は一瞬面食らったが、 「えぇ。」と答えた。 沖田は再び月を見上げ、うっとりと言う。 「…僕ね、とっても面白い子を見つけちゃった。 とっ~ても、面白い子。」 「…へぇ? それでどうしたの?」 「新撰組に勧誘しちゃった★ あの子、絶対欲しいんだ…。」 クスクスと女性の笑い声。 「それは楽しみだわ…。 あんたがそこまで目を輝かせる子、どんな子か実際に会ってみたいもの。 …商売にも役立ってくれそうだしね?」 女性の言葉には、怪しい響きが帯びていた。 沖田はそれに気付いて、ニヤリと笑う。 「役立ってくれると思うよぉ。 あの子、きっといろいろ使えるからね…。 生死の賭けにも、商売にもね。」 そう言った沖田の顔は、格好の実験台を見つけた研究員にも、真新しい未知の玩具を与えられた子供にも見えた。
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