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“うん。
来月、娘が生まれる。また、家族が増えるよ。”
電話の向こうで哲太が笑った。
「大事にしろよ。
お前の家族くらいは。」
“あぁ、そうするよ。
じゃ、もう切るよ。お前の声が聞けて良かった。
またな。”
「あぁ、また…な。”」
そう言って電話が切れた。
冷たい風が体に染みる。
俺はまた一人だ。
哲太は24歳。でも俺は424歳の化物だ。
400年…長かった。
俺の周りには今を生き、そして、半世紀で死ぬ奴ばかりだ。
俺と同じ運命の奴なんかいない。そう、家族でさえも。
哲太は家族がいる。
俺は一人だ。
そりゃ、昔は家族はいた。
この運命を受け入れて、それを理解してくれる愛する家族が…。
でも、俺の血を引く子供たちは時間の流れに身を寄せて、あっという間に俺より歳をとって、老いて死んだ。
運命は残酷だった。
血の繋がりさえ切ってしまう。
長い時の中で俺は一人だった。
そして、これからも。
だんだんと夜は更けていく。
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