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“貴方に千年の時を与えましょう。”
透き通るような声。
俺には女神に見えた。
「千年の時を?」
“はい。
これは運命。
拒むことは出来ません。”
俺の頭は考えることさえ忘れている。現実にはあり得ないことなのに、それすら分からない。
「俺は死んだのですか?」
“いいえ、貴方は生まれ変わるのです。
私たち神の使者へ。”
「なぜ俺が?」
女神はそっと俺の頬を撫でた。その感覚は今でも覚えている。
とても温かで、優しくて…
母上のような方だった。
“言ったでしょう?運命なのだと…。
今宵より貴方は千年の時を生き、世界を見て来なさい。
この国から世界へと目を向けるのです。
その為なら、私の力を授けましょう。”
そう言って女神は俺と額を合わせた。
ふんわりと太陽の匂いがして、包まれる感じだった。
“千年…その長い時の末に貴方は天に召されることでしょう。
その時、貴方はひとつの答えを見つけるのです。”
ヒマワリ畑がざわめいた。
“さぁ、お行きなさい。
貴方の長い旅の始まりです。”
女神が俺に微笑んだ。
そして、俺は真っ暗な闇に墜ちていった。
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