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――ドクン。
鼓動が高鳴る。
――ゴロゴロ!ドオン!!
神の使者の誕生を雷が祝うかのように轟いた。
続いて真っ黒な迅風が暗い闇を集めて俺に吹き付けた。
その時の俺に感覚はない。
でも、身体の中で何かヤバいことが起きているのは感じ取ることが出来た。
そして、次の瞬間。
今までの記憶が呼び起こされ、俺の頭の中を走馬灯のように駆け巡った。
家族との思い出…
だけど、何か変…。
みんな泣いてる。
血を流して…。
父上、なぜ?
ゆっくりと俺の親父は口を開いて何かを口にした。
何て言ってるのか分からない。
すると、みるみるうちに親父の涙は赤くなり、そして、動かなくなった。
みんなも同じように…。
走り寄って、無事を確かめる。でも、みんな…
―死んでる。
魂の脱け殻となった俺の家族は皆、血で溢れていて、グロテスクな傷口がぽっかりと口を開けている。
―そうだ、思い出した。
皆、殺されたんだ。
夜中突然やって来た、おかしな輩に…。
その瞬間、俺の中は復讐と憎しみで満たされた。
再び迅風が吹き付けた。
今度は冷たく、残虐な風が。
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