●神の声●

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握りしめた刀。 血色の瞳。 血を求め、渇いた唇。 全身の神経が鋭い刃のように研ぎ清まされて、こんな気分は初めて。 稲光を背に体を起こし、真っ直ぐに太刀筋を整える。 大地が自分に力を貸しているみたいだ。 斬るのは目の前に集まり出した侍ども…。 いや、こんな奴らに侍を語る資格はねぇ。 「おい、生きてるぞ。 さっき俺が斬ったはず…」 「なんか言ったか?」 その男は最後まで言い切らないうちに首を跳ねられ、肉の塊になっている。 「や…やっちまえ!!」 そう言って、大の大人が寄ってたかって刀を俺に向けた。 「許さない。 俺の家族を奪いやがって。」 静かな声量で呼びかけた。 馬鹿みたいに熱を入れて、騒ぎたくなかったから。 俺は刀を握り締めた。 悪を斬るために。 父の言う悪だけを斬るために。 ゴォっと黒い稲妻が吹いた。 俺は目醒めた。 神の使者として。 体が軽い。 それに、疲れも痛みも感じない。最強の肉体を手にした。 己の運命を確かに受け入れた。 生きてやるよ。 1000年くらい。 そして、答えを見つけてやる。 焼けた屋敷に俺は一人、月に誓った。
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