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高くそびえるビル。
何の為にその高さが必要なのか?よく分からない。
よどんだ月が濁った夜空に映えている。
とにかく、辺りは灯りひとつない、真っ暗な闇に包まれている。
その冷えた闇の中に一人の青年が闇の色の服に身を包み、月明かりに酔い知れている。
今年でもう424年…。
まだ半分以上も寿命が残ってんのか…。
こんな世界、早くおさらばしたい。
だが、答えは見つからない。
ピピピ…ピピピ…
懐でケータイが鳴った。
「はい。」
“鏡夜…また今晩も夜風に当たりに夜の散歩か?”
電話の相手はいつか通っていた高校の同級生の“哲太(てった)”である。
彼はもう立派な大人で、愛する家族がいる。
「まぁな。
それより、電話っていうのはお前にしちゃ珍しいな。
いつもメールだろ?」
“いや、急にお前の声が聞きたくなってさ…。
元気そうだな。”
「当然だ。
俺は病気や怪我なんかしたくても、出来ないんだから…。」
ふと口元に笑みが溢れる。
久しぶりの数少ない友人の声に嬉しさを感じる。
“今年で何年なんだ?”
「424年だよ。
お前は、今年で24か…。」
彼がその数少ない友人の真実を教えた一人だ。
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