再会

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あたし達を乗せた車はいつもあたし達が遊びまわっている夜の街を通っている。 綺麗に着飾ったお兄さんやお姉さん、仕事で疲れ果てたサラリーマンは既にお酒で赤い顔をさせている。 そんな人達で賑わう昼間とは別の顔を持つ夜の街。 いつも歩く同じ道なのに、こんな高級車に乗っていると新鮮な感じだった。 自分がすごい人みたいな気分になるから恐い。 車は更に5分程走ると停まった。 だけど車が着いた場所は、どう見ても飲み屋街にしか見えない。 戸惑うあたしにお構いなしにドアを開ける運転手。 運転手つきの高級車。 しかも中から降りたのは油ギッシュなハゲ親父ではなく、若くてピチピチな女の子が二人。 行き交う人達は羨望の眼差しであたし達を見ている。 それはちょっとした優越感だった。 「帰りは電話するわ」 ……かっこイイ! 晶は運転手にそう告げると、あたしを促し目の前のビルへと向かって歩きだした。 「ちょ、ちょっと!晶?ここって飲み屋さんが立ち並ぶビルだよ!?」 あたしは慌てて晶の腕を掴んだ。 「そうよ。紫音は黙ってついてくればいいの」 ついてこいって言われても、ついて行けるわけないじゃない! ……ついていくけど。 仕方なく晶を掴む手の力を抜くと、晶はビルの中へと入って行った。 そしてあたしが後からついて行くとエレベーターに乗り、迷うことなく5階を押す。 「晶、こういうとこ来慣れてる?」 「初めてよ」 きょとんとしてる晶を、あたしは上目遣いに見続けた。 「本当よ!行けばわかるから」 満面な笑顔の晶。 晶はああ言ってるけど、初めてにしては躊躇すらしないんだもん。 誰だって疑うよ。 だけどその疑問が綺麗に拭い取れないまま、あたしは黙ってついて行かなければいけなかった。  
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