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沈黙のまま、エレベーターはあたし達を5階まで運んだ。
晶が立ち止まったのはグレーのドアに『dark★night』と書かれたお店の前。
店内はまだ見てないからわからないけど、ドアを見るからにはなんとなく品格のある、つまり高級Barの匂いがプンプンした。
とにかく庶民が気軽に訪れるような所ではないことが、疎いあたしでもわかる。
「いらっしゃいませ。当店へは初めてのお越しでしょうか?」
黒いスーツを身にまとった男の人が、あたし達に気付き微笑む。
「ええ。累をお願いしたいの」
るい?
るい……ルイ……累……累!?
「累……!?」
晶は驚くあたしを見てニヤリと笑った。
まさか、あの累!?
あたしの心臓は爆発寸前!
一気に血が逆流を始めた。
うそぉ―――ッ!!!?
夢にまで見た累と逢えるの!?
あたしは今朝の夢を思い出し、さらに真っ赤になった。
「こちらへどうぞ。席をご用意いたしましたので、暫らくそちらでお待ちください」
促されるままテーブルに向かう途中、あたしは晶に小声で話し掛けた。
「どうやって調べたの?」
だけど言いながら途中で気付いた。
今の質問は晶には愚問だということを……。
案の定、晶は心外とばかりに目を見開いて「あたしは天下の綾小路よ!」と冷ややかな目をして言った。
通されたテーブルのソファに座ると、二人の男の人があたし達の横に座った。
累ほどじゃないけど、かっこいい。
おしぼりをくれながら、
「初めまして!すぐ累さん来ますけど、それまでお相手させてくださいね!俺は聖也でぇぇす。よろしく」
「俺は尚人です!よろしくね!」
と挨拶されたのだけど、あまりのテンションの高さにあたしは引いてしまった。
そんなあたしに二人は気付いてなかったけど、晶は気付き大爆笑!
「????」
二人は顔を見合わせ首を傾げたが、すぐに気を取り直し「さぁ!何がおかしいかわからないけど、とりあえず何を飲みますか?」とニッコリ笑った。
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